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酷過ぎる。
日経ビジネスオンライン
100ミリシーベルト以下なら健康への影響は大きくない
元原子力委員会委員、田中俊一氏インタビュー
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110912/222598/?P=1
―― 原発事故以降、田中さんは福島県内で除染活動を続けています。もともと「原子力ムラ」に身を置いていた田中さんが除染活動を始めたのはなぜでしょうか。
除染をしなければ何も始まらない
田中:贖罪意識で除染を始めたととらえるメディアの方もいます が、それは必ずしも当たっていなくて、とにかく除染をしなければ何もできない、何も始まらないと考えているからです。現状でも避難している方々は大勢いま す。故郷に戻ってこられないという状況が続いている限り、復興も原子力も議論にならないと思っています。
福島県の浜通りだけでなく、福島市や郡山市、二本松市などの中通りも放射能で汚染されています。年間被ばく量の推計値が20ミリシーベルトを超える計画 的避難区域はすぐに避難しなければなりませんが、中通りは「1ミリシーベルト以上20ミリシーベルト未満」という、いわゆる「現存被ばく状況」にある地域 です。
こういった地域は、避難のマイナスを考慮すると当面はそのまま生活を続けるのは仕方ないけれど、事故が収束すれば除染をして線量を下げるよう、国際放射 線防護委員会(ICRP)は勧告しています。それを日本は受け入れているわけですから、年間1ミリシーベルトを目指して除染するべきです。
これらのことが、私が除染している理由の1つです。
もう1つは、避難している方々と接していると、「いつ帰れるのか」ということを非常に心配しています。「帰れるのか帰れないのか」という判断も含めてで すね。こういった不安が避難している方のすごく大きなストレスになっています。帰れるという希望を実現するためには、除染する以外の方法はありません。
除染を当面の雇用の機会に
付け加えれば、避難している方々は仕事がありません。仕事のない毎日ほどつらいことはありません。除染作業は若干の被ばくを伴いますが、除染を当面の雇 用の機会にすべきではないか、と思っています。もちろん、「嫌だ」という方もいると思いますが、除染作業を望んでいる方も大勢いますので、こうした方々に 働く機会を提供しながら除染に協力してもらうことが大事だと思います。
広大でかつ様々な環境を除染する技術はまだ確立されていません。除染作業を進めながら、絶えず除染すべき対象に適した技術を開発し、改良しなければなり ません。除染作業は数年間にわたって確実に続きますので、除染は福島県の産業の1つになると考えています。伊達市の仁志田昇司市長は山林を除染しつつ、林 業を再生させようと考えていますが、こういった発想はとても重要だと思います。
――除染の場合、放射能を帯びた廃棄物の処理が問題になります。
田中:廃棄物の問題は大変難しい課題です。現状は、放射性廃棄物についての国の基準がありません。環境省は現行法令の中でできることだけを示していますが、それでは現実に合いません。
廃棄物の処分場は自治体ごとに作るべき
例えば、焼却灰などに含まれる放射性物質が1kg当たり8000ベクレル以下であれば、一般廃棄物処分場での埋め立てが可能ということになっていますが、除染によって出る廃棄物はそのレベルをはるかに上回るものです。
除染とは放射能によって 汚染された土壌の上澄みをまとめて効率よく取り除くことです。1kgあたり100万ベクレルぐらいの廃棄物を処分できるように しなければ、除染作業は進みません。土壌、草、樹木、石、コンクリート、アスファルト、汚泥、家畜の糞など様々な対象物があることを考えれば、放射能を分 別することも基本的には不可能でしょう。
また、廃棄物を処分する場合も、処分場は各自治体に少なくとも1つは必要になると思います。
私がアドバイザーをしている伊達市だけでも100万トンを超えるでしょうし、県全体では数千万トンにもなると思います。これほど大量の放射性廃棄物を運 搬するリスクを考えれば、どこかにまとめて最終処分ということも現実的でありません。そもそも、自分のところ以外の廃棄物を受け入れるところが見つかると も思えません。
除染作業の視察に訪れる政治家の中には、「地域の協力で除染を進めるべき」と考えている方もいますが、無償で協力させるという考え方では長続きしませんし、本当の協力も得られません。そもそも、国土の回復という仕事は国が責任をもってやるべきことでしょう。
除染は私有地や私宅にも及びますから地域の協力がなければできません。つまり、国が責任を持って、地域の顔が見える地元自治体に任せて、自治体と住民の主体的な協力を得ながら除染するということが本来の姿でしょう。
少々のセシウムが体に入っても心配無用
――専門家によって安全かどうかの見解が異なっているということもあって、国民の不安が日に日に高まっているように思うのですが…。
田中:このところ、専門家やメディアが色々なことを言うので、微量の放射線に対する不安が国民の間で高まっています。国から出される基準も統一性がないため、国民は誰を信頼してよいか分からない状態で、当初よりも不安は大きくなっています。
この種の不安を克服するためにも除染作業に関わることは重要だと思っています。放射線や放射能に直接関わる中で、「放射線や放射能とはこういうものか」という知識や肌感覚を身につける機会になるはずです。
――風評被害もどんどんひどくなっている。
田中:本当にひどくなる一方ですね。放射性セシウムが1ベクレルでも体内に取り入れれば、体に何か悪いことが起きるというようなことを主張する専門家がいて、住民は非常に神経質になっています。
住民の方には、セシウムと同じような性質をもつカリウム40という放射性物質を、誰でも3000~4000ベクレルほど体の中に持っていること、放射能 は病原菌と違って体の中で増えることはないということ、少々のセシウムが体に入っても心配はする必要はないということなどを申し上げています。
ほかの放射性物質を含めれば、7000ベクレルほどの放射性物質が体の中にあり、日々、内部被ばくしています。放射能は怖いという意識だけにとらわれているようで、そのことによる精神的ストレスの方が心配です。
汚染地域の買い取りは論外
6月に伊達市のウメで1kg当たり580ベクレルの放射性セシウムが出て出荷制限の対象になりましたが、このウメを10kg食べても内部被ばく量は75マイクロシーベルトです。神奈川県で出た570ベクレルのお茶もそうでしょう。
このレベルのお茶の葉を1kg食べてもわずか7マイクロシーベルトの被ばくですし、1kgもお茶を食べる人はいません。お茶の場合は出荷制限で100億 円以上の損害賠償請求です。除染によって汚染を減らし、風評被害を減らすことは、今後の賠償額を減らすことにもつながるのではないでしょうか。
――「除染よりも汚染された土地を買い取るべき」という意見もあります。
田中:それは論外ではないでしょうか。公示価格で考えれ ば買い取りコストは5兆円ぐらいという話を聞いたことがありますが、そんなに安く買い取れるはずがない。汚染された土地は田畑が多いと思いますが、田畑は 公示価格が低いので、仮に買い取りに応じたとしても公示価格より買い取り価格は上がるでしょう。
それに、農業や牧畜を生業にしてきた方々は代替地を求めるでしょう。でも、我が国で代替地はどこにあるのでしょうか。もちろん、汚染がひどく、除染が難 しい地域は恐らくあるかもしれません。ただ、20km圏内でも除染は可能ですし、まだ除染ができるかどうか判断できるようなことは何もしていないのです。
それにしても、「生活の場を買い取って他所に出て行け」などと、どうして言えるのでしょうか。避難を余儀なくされている方の立場に立って、最後まで除染 に努力するという姿勢を国は見せるべきです。政治家の中には軽々に買い取りを主張する方もいるようですが、「どのような人間教育を受けてきたのか」と問い たくなります。
――国の規制も実態にそぐわないことも多い。
被害を拡大しているのは国
田中:除染活動をしていると、国の基準の不合理さに悩まされます。環境省は海水浴場における放射性物質濃度の基準として、セシウムは1リットル当たり50ベクレル以下とする案をまとめました。
ただ、飲料水の暫定基準値は1リットル当たり200ベクレル。海水浴場で海水を毎日1リットル飲む人がどこにいますか。こういう基準を決めることで、小学校や中学校のプールの除染が難しくなり、除染コストがどれだけ増える考えたことがあるのでしょうか。
海水浴場の基準を200ベクレルにしても何も起きません。もう異常としか言いようがない。東電の事故がきっかけですが、国が被害を拡大していると言いた くなります。決まったことは仕方ないので、国の基準を満たすようにプールを除染しましたが、最後に残ったアオコや汚泥の混じった水の処理が大変でした。
――もしもに備えて厳しめに見ておいた方がいい、ということなのでは…。
田中:厳しめに見るのは構いませんが、厳しくしすぎることで現実に生活できなくなってしまいます。放射線被ばくの基準は、生活を維持することの利益と健康リスクの影響を考慮して決められていますので、厳しすぎると他のマイナスの方が大きくなります。
一番のリスクは被ばくを怖れるストレス
現地に行くと、「誰を信用したら良いんですか」という質問を受けます。はっきり申し上げて、専門の世界には少数意見があり、様々なことを言う人がいま す。ただ、我が国の放射線防護基準は、国連科学委員会やICRP、世界保健機関(WHO)などが協力し、蓄積した半世紀以上のデータを踏まえた作ったもの です。
ヒロシマ、ナガサキ、ビキニ諸島、セミパラチンスク、スリーマイル、チェルノブイリ――。こういったところで得られた科学的なデータを基に、国際的な合 意として放射線防護の基準が作り上げられています。科学者の様々な意見を否定はしませんが、現在の状況で国際的な合意と違う異見を主張して、国民を混乱さ せるのは控えるべきであると思います。
これを言うとよく批判されますが、100ミリシーベルト以下ではそんなに健康影響は大きくありません。私達は様々なリスクをもって生きています。よく言 われますが、たばこを吸うと1シーベルトの被ばくよりもガンになる確率が高い。受動喫煙も100ミリシーベルト並みの発ガンリスクがある。野菜不足、運動 不足、肥満などは100ミリシーベルトの被ばくよりリスクが大きいという国立がんセンターの統計があります。
一番のリスクは被ばくを怖れるストレスと言われています。様々なリスクのバランスを考えて、自分で判断してストレスを抑制することが大事ですと申し上げています。残念ながら過剰に恐れすぎている。恐れさせられているといった方が正確かも知れませんが…。
「日本はおかしい国になっている」
今回の原発事故で日本はおかしい国になっているのではないかと思うことも少なくありません。原発事故後の現在の状況は放射線との一種の戦争状態だと思いますが、国の基準も平時のことを基本に示され、消費者も平時のことを要求しています。
食品の暫定基準値もそうです。放射性セシウムで言えば、日本の飲料水や牛乳は1kgあたり200ベクレルですが、EUは1000ベクレルです。恐らく、欧州の方が乳製品をたくさん食べると思いますが、基準は日本よりも5倍も緩い。
日本では科学技術立国と言うけれど、科学のリテラシーはどうも怪しいのではないかと思い始めています。放射線が危険かどうかは程度の問題です。安全な食 べ物も食べ過ぎれば危険です。「放射線のリスクも量の問題だから定量的に考えて下さい」と申し上げるのですが、シーベルトとかベクレルという単位もあっ て、なかなかそういう判断にはなりません。専門家から様々な見解が出ているために、信用できなくなっているということもあるかもしれません。
いずれにせよ、私は避難している方々が一刻も早く戻り、福島県の皆さんが少しでも安心して暮らせるように、除染活動を続けるだけです。
by Hannibal
民主党終わりました。